イギリスでの働く形態(Employee/Worker/Self-employment)

イギリスでの働く形態(Employee/Worker/Self-employment)

(最新更新日:2024年2月16日)
※現時点で分かる範囲で正しいと判断される情報を掲載していますが、イギリス政府の公式サイト等も記載しているので、必ず最新情報を自分で確認しましょう。

イギリスには、日本のような歪な仕組、正規・非正規、フルタイムパート、アルバイト等は存在しません。
日本の仕組はまず、頭から消し去りましょう。

イギリスでは、働く形態としては、以下の3つで、それぞれ、働く人の権利も異なります
イギリスを含むヨーロッパでは、自分の権利を理解しておくのは、自分の責任でもあります。

Employee (エンプロイー/従業員)
Worker (ワーカー)
Self-Employement (セルフ・エンプロイメント/自営業者)


イギリスの公式相談所、ACASthe Advisory, Conciliation and Arbitration Service)に詳細があります。

イギリスで働くことに必要なビザを企業が取得して働く/働いている場合は、ほぼ間違いなく「Employee」にあたるでしょう。また、短い時間でもパートタイムで直に企業と契約して働いている場合も、「Employee」の枠に入る場合がほとんどだと思われます。
働く時間が週や月等で定まっているもので、Redundancy(リダンダンシー/余剰人員の解雇・部署自体が海外に移転等)の場合は、Minimum Notice Period(最低限の前もっての通知:働いている場所や契約、働いていた期間によって異なるものの最低1か月はあるはず)等が保障されています。
Payslip(ペイスリップ/給料明細)もあり、税金等(National Insurance/国民保険やIncome Tax/所得税等)は企業が処理しており、税金がひかれた金額が振り込まれます。
2024年4月からは、働く初日から、Flexible working requestフレキシブル・ワーキング・リクエスト/一部を家で働いたり働く時間の変更等の交渉ー交渉の権利があるけれど必ずしも合意にいたるわけではない)を行うこともできます。
これは、パートタイムで週10時間ずつ働いている場合でも、「Employee」となっている可能性は高いです。
エージェンシーを通して働いている場合は、そのエージェンシーの「Employee」として分類されていることが多く、マタニティー・リーブ等も取得できます。

Worker(ワーカー)は、決まった時間(週20時間等)が雇用者から保障されているわけではなく、自分か雇用者が必要なときに、お互いが合意した分、働くということケースが多いです。前もって雇用者から提案された仕事や仕事時間が合わなければ、断ることも可能で、全く問題はありません。
Payslip(ペイスリップ/給料明細)もあり、税金等(National Insurance/国民保険やIncome Tax/所得税等は企業が処理しており、税金がひかれた金額が振り込まれます。
ゼロ時間契約(週や月で定められた勤務時間がない)で働く人が、必ずしも「Worker」ではなく、「Employee」と分類されている場合もあります。
これも、契約書に記載されていることもあれば、人事に確認することもできます。
「Employee」よりも、権利は少ないのですが、National Minimum Wage(最低賃金)やPaid Holiday(有給休暇)、Whistle blowing(ウィッスル・ブローイング/内部告発)やDiscrimination(ディスクリミネーション/差別)への保護は、「Employee」と同様にあります。
契約にもよりますが、Redundancy(リダンダンシー/余剰人員の解雇・部署自体が海外に移転等)の場合に、前もっての予告の必要性はなく、Unfair dismissal(アンフェア・ディスミサル/不当解雇)についても、保護がない場合もあります。また、マタニティー・リーブも基本的に保障されていません。

Contractor(コントラクター/契約)や、Freelance(フリーランス)の場合も、プロジェクトや契約で定められている期間が、「Employee」「Worker」「Self-employment」なのかは、雇用者との契約関係によって異なります。そのため、契約書で、この関係を明確にしておく必要があります。エージェンシーを通して契約期間がある働き方をしている場合、恐らくエージェンシーの「employee」というステータスが多いと思いますが、状況によって違う可能性もあるため、確認しておくことは大切です。

Self-Employement (セルフ・エンプロイメント/自営業者)の場合、自由度が高い反面、働く人の権利もとても限られます。
Youth Mobiligy Visaでも、一定の条件を満たすと「Self-Employment」となることも可能なようですが、National Minimum Wage(最低賃金)やPaid Holiday(有給休暇)等が適用されないこともあり、イギリスの法律をよく理解しておくことが大切です。私自身、「Employee」で働いていた時期、「Self-emploument」で働いていた時期、また両方のコンビネーションで働いていたこともありますが、「Self-employment」はイギリス政府の公式サイトで登録をする必要があり、Tax return(タックスリターン/所得税申請)を行い、定められた税金を自分で払うことも必要です。
Youth Mobility Schemeのように、短い期間で来ている人々に「Self-employment」として働いてほしい(例えば、一時間働いたらこの金額で、月毎や週ごとでInvoice(請求書)の発行をして賃金をもらう)はまずないとは思いますが、そう言われたら、法律的な手続きや、働く人の権利がとても限定されていることも考え合わせる必要があります。

契約書は隅から隅まで読み、分からないことを質問するのは、働く人の責任でもあります。
もし、説明をしたがらない、質問をはぐらかして答えない会社だと、あとから問題になる可能性もあるので、その会社で働く価値があるのかよく考えたほうがいいでしょう。
また、日本人駐在員等だと、英語だけでなく、現地(ヨーロッパのほか地域等)の言葉や法律を知らない場合もかなりあります。
適当な答え(不正確な回答)が返ってくる場合もあるので、そのまま信じるのではなく、現地人の人事に確認するか、それが無理な場合は、やりとりの記録を必ず残しておきましょう。できれば、口頭ではなくメールに残っていたほうがいいのですが、口頭で済まされた場合は、メールで口頭でこういうふうに合意しました、という内容を、念のため送っておきましょう。
日本でも同じだとは思いますが、まず自分の身はできる範囲で自分で守ることが必要です。
数十年ロンドンや海外で働いている日本人が、日本人だけで家庭も会社も休日も過ごしていて、現地の言語はレストランのウェイターレベルで、法律は全く分からないけれど、新たにきた日本人に(悪気はなかったとしても)不正確な情報を言っているのはよく見ました。
また、残念ながら、新しくやってきた日本人をねらって、意図的にだます日本人経営者や日本人もいます。例えば、日本人だけに残業を強要し残業代を払わない、といったケースも聞きましたが、これは完全に違法です。日本と違って、サービス残業という概念自体、存在しません。
また、搾取が横行している職場では、長くいる日本人従業員が新しく入ってきた日本人にこういった違法なことに黙って従うようプレッシャーをかける場合もあるようです。違法なことに従う必要はないし、長く働いている人々や、長くその土地に住んでいる人々が、その土地に適用される法律をよく知っているとは限りません。
もし、職場が日本人ばかりで、ヨーロピアンが入ってもすぐ辞めるような会社だと、そこで搾取や法律違反が起きていないか、そこで働き続ける価値があるのかを考えたほうがいいでしょう。
ヨーロピアンは、通常、法律違反や働く人の権利が守られないことに黙って耐えたりせず、きちんと雇用主に立ち向かい、それでも解決されなければ、裁判に訴えるなり、辞めるなりします。
イギリスは、他の西ヨーロッパの国々と比べると、働く人の権利が非常に低いのですが、それでも、日本よりはずっと高いです。
権利や法律を知らなくて困るのは自分だし、搾取されないよう、きちんと自分で調べられることは、調べましょう。
働くことに関する、有給や休憩時間の権利等は、イギリス政府の公式サイトから、確認できます。
もし、個人では対応しきれないことが起これば、悩まず、すぐにCitizen AdviceACASに相談しましょう。
イギリスでは、自分の権利を守るために立ち上がる人々に対しては、とても優しく協力的です。

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