the Employment Rights Bill - 雇用権利法案

the Employment Rights Bill - 雇用権利法案

(更新ː 2025年2月18日)
まだ詳細なことは決めている段階で、実際の施行も2026年秋以降になるとは見込まれているものの、the Employment Rights Bill(ザ・エンプロイメンツ・ライツ・ビル/雇用権利法案)で、働いている人々の権利が強くなる予定です。
簡単な情報は、国営放送BBCの記事から。
イギリス政府の公式な情報は、ここより。
※私は、法律の専門家ではないので、道路標識のように、どこから正しい情報を得られるか、どうやって自分の権利を知ることができ、行使するか、ということに参考情報としてつかってください。
また、The UKは、イギリス、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの連合4か国であり、国によって法律が異なる場合もあることには注意が必要です。それぞれの国の政府の公式サイトから確認しましょう。

簡単にいうと、多くの人々に関るのは以下の点です。
  1. Uncair Dismissal (アンフェア・ディスミサル/不当解雇)
    現在のところ、北アイルランドを除いた3か国に適用予定です。
    現在は、2年雇用されていることが条件となりますが、働き始めの初日から適用される予定です。
    ただ、これと同時にProbation period(プロベィション・ピリオド/試用期間)を9か月にすることものぼっており、まだ検討中だそうです。
    私が経験した限りでは、イギリスでは、試用期間は3か月ぐらいが多くて、航空業のようにセキュリティーが厳格な場所では6か月という場合もみました。

  2. Zero-hours contracts (ゼロ・アワーズ・コントラクト/ゼロ時間契約)

    Casual contracts(カジュアル・コントラクツ)という呼びかたでも知られていますが、働く時間が保障されていない代わりに、雇用主から頼まれても、その時間を断ることも自由です。
    新たな法案では、雇用主に、ゼロ時間契約者に対して、保障された時間の契約(その契約書の前の12週間に働いた時間を基準とする)をすることを義務付けようとしています。
    もし、ゼロ時間契約者が、以前のままで保障された時間の契約なしで働きたいと望む場合は、それも可能です。
    また、ゼロ時間契約であっても、シフトに変更がある場合は、「reasonable(リーゾナブル/妥当な、筋の通った)」なNotice(のティス/通知・予告)を受け取る資格があり、もしそのシフトが突然キャンセルされたり、シフトが予定より早く終わった場合もcompensation(コンペンゼィション/賠償)を受け取る資格があります。

  3. Fleible working (フレキシブル・ワーキング)
    働く初日から、雇用主が明確に法律に基づいて「Unreasonable(アンリーゾナブル/不当)」だと証明できない限りは、フレキシブル・ワーキングのリクエストを雇用主は受け入れる義務があります。
    ただ、ビジネスに大きく悪影響が出ると雇用主が判断した場合、たとえば、カスタマーを現地で扱う仕事だったり、現在すでに働いている人との関係上難しい等は、現在フレキシブル・ワーキングを断る妥当な理由として使われていますが、今回の法案でどう変わるのかは、まだ不明なようです。

  4. Sick Pay(シック・ペイ/法定傷病手当)
    現在のところ、シック・ペイを受け取るには、3日以上連続病気であり、かつ少なくとも平均123ポンド/週の給料をもらっている必要があります。
    新たな法案では、この最低限の給料が取り払われ、給料に関わらず誰もが対象となり、病気になった初日から適用される予定です。
    残念ながら、金額は低いのですが、もし病気で働くことができなければ、週に116.75ポンドが雇用主から支払われ、28週間が上限となっています。会社によっては、福利厚生でそれ以上の金額が設定されている場合もあります。契約書、Staff Handbookはきちんとチェックしておきましょう。

  5. Unpaid parental and bereavement leave (アンペイド・ペアレンタル・アンド・ビリーヴメント・リーヴ/無給の両親休暇・近親者の死別時の無給休暇)
    現在は、その企業で1年働いていることが条件で両親休暇が取れるのですが、新法案では、働いている初日から取得可能となる予定です。
    また、近親者の死別等についても同じです。
    なお、近親者に含まれるのは、子供・両親・パートナーだけでなく、大きく面倒をみていた近所の老人なども含まれています。

  6. Fire and Rehire (解雇してすぐ再雇用)
    雇用主が、ビジネスの費用を削りたい場合、いったん働いている人を解雇して、新しい契約(給料や福利厚生が低くなる、条件の悪いシフト等が付け加わる等)で再雇用しようとする場合がありますが、新しい法案では、こういったFire and Rehireの慣習を禁止します。
    ただ、会社がinsolvent(インソーヴァント/破産した・無一文の)となる危険性が非常に高い場合は、認められる場合もあります。

今回の変更に含まれないもの:
長年、雇用形態の種類(イギリスでは3種類ーEmployee, Worker, Self-Employed)について、シンプルで搾取がしにくい仕組にするために雇用形態をすべてEmployeeにしては、との動きもあるのですが、今回の変更には含まれないことが決まっているようです。
この形態についてはここに、日本語で詳細を記載いています。

特に日系企業は日本人がThe UKの法律をよく知らないこと、或いは自分の権利を知ろうとしないことを利用して、日本人を搾取する事例をたくさんみました。
残念ながら、雇用法を破る日系企業もかなりあり、自分の権利を良く知り、権利をDefend(ディフェンド)することは必須です。
イギリス政府の公式情報をみても、今一つ判断できないときは、遠慮せず、公式無料相談所のACAS(エイカス)か、Citizen Adviceへ。外国人の英語にも慣れていて親切です。
イギリスではFair(フェア/公平・公正)であるという価値観はとても大切で、自分の権利が侵害されたときに立ち上がる人々は尊敬され、かつ多くのサポートを受け取ることができます。
日本にだけ住んでいると、「権利なんて口に出すのは、仕事ができるようになってから/権利と義務はセット」という嘘に洗脳されているかもしれませんが、働く人の権利、基本的人権は、誰にでも適用するもので、仕事がある程度できようと全くできなかろうと関係ありません
権利(身体的・心理的な暴力のない環境や平等・対等に尊重されて扱われる権利等)は、ひととして生きている限り、地球上の誰もがもっているもので、誰にも奪えないものです。

※権利については、アムネスティーと女優のアンジェリーナさんが書いた「Know Your Rights」の英語版を読むことをお勧めします。子どもの権利についてですが、子どもの権利と大人の権利は基本的な部分は同じで、子どもは立場が弱いために、それを考慮して権利を守るための考慮が大人の権利に上乗せされているので、十分役立ちます。
日本語版もあるようですが、英語にしかない概念が無理やり日本語に訳されると、意味がねじ曲がってしまい、内容の誤解につながるので、英語で読むことを強くお勧めします。
分かりやすい英語で、かつ法律用語や権利についての概念などもきちんと説明されています。

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